体位変換をする前に必ず利用者に声をかけましょう。急に身体に触れると利用者は驚きますし、不快感を覚える人もいます。これは、家族であっても同じです。意思を確認するためだけでなく、「身体を左側へ向けます」「首と背中の下に腕を通します」など、どのような動作をするのかを伝えることで、相手は安心します。
また、皮膚の状態をこまめに確認してください。体位変換をする前におむつ交換や身体清拭を行う場合もあります。その際は「発赤が出ていないか」「陰部が蒸れていないか」「皮膚がただれていないか」など、細かい部分まで確認しましょう。麻痺がある場合は患部の状態に本人が気づいていないので、特に注意が必要です。シーツのしわがあると褥瘡になるリスクも高まります。少しのしわでも皮膚の負担になるため、きちんと伸ばすようにしてください。
体位変換の正しい方法を知りましょう。ここでは基本となる仰臥位から側臥位に体位変換する方法を解説します。体位変換の基本的なポイントは「利用者の身体を向ける方向と反対側に立つ」「介護者側に身体を引き寄せる」「利用者の身体が向く方に立つ」「必要な部分にタオルを入れる」「下になっている方を引く」の5つです。なお、仰臥位は「仰向け」で、側臥位は「横向き」という意味です。
まずは利用者の身体を向ける方向の反対側に立ってください。その上で利用者には両手を腕の前に組むようにしてもらい、身体を可能な限り小さくまとめます。関節を動かせる場合は膝を立ててもらうといいでしょう。その際に、体位変換前に使用していたタオルやクッションを下げます。その後、利用者を自分の方へ引き寄せてください。一気に全身を引き寄せるのは危険なので、最初に上半身、次に下半身の順番で引き寄せます。シーツにしわができる可能性が高いので、その都度直すようにしましょう。身体の向きを変える際には、利用者がベッドから落ちないように注意しなければなりません。本人の身体が向く方に立つようにしてください。
体位変換をした後は、その体勢を無理なく維持できるように背中や足などにタオルを入れます。どの体勢が利用者にとって無理がないのかはそれぞれ異なりますので、本人の意思や理学療法士のアドバイスを参考にしましょう。マットレスと接触している部分、特に肩は皮膚に負担がかかっています。肩の骨は他の部位よりも突出しており、褥瘡ができやすいので注意が必要です。マットレスと接着している方を引き出して褥瘡を防ぎましょう。
体位変換が苦手な人は教育体制が整った職場で学びましょう。教育体制の充実度を自力で調べるのは困難です。そのため、内部事情に詳しい転職エージェントを活用してください。自力で探すよりも多くの情報を得ることができます。
体位変換の負担を減らすためには利用者とのコミュニケーションがカギとなります。協力体制を作ることでスムーズに作業を進められるためです。介護士は腰痛になりやすいので、あらかじめ対策を練っておきましょう。