負担を最小限にしながら効率よく体位変換を行うために活用すべきなのがボディメカニクスです。ボディメカニクスとは骨格や筋肉などを中心とした身体のメカニズムを活用した技術のことです。ボディメカニズムには7つの原則があり、それを活用することで安全かつ効率的な介護を実現できます。
まずは足幅を前後左右に広げ、腰を落として立った状態を安定させてください。床と接している足元の面積を支持基底面積といいますが、この面積が大きければ大きいほど安定します。足を閉じると支持基底面積が狭くなってしまうので、無理のない範囲で足を開いて立ってください。左右だけでなく、前後にも広げると効果的です。
自分と利用者の重心は可能な限り近づけるようにしましょう。そうすることで少ない力で介助できます。介助の対象となる利用者と自分の腰の位置が離れてしまうと、双方の重心が大きく離れるので余計に重たく感じてしまいます。自分の立位を安定させてから、重心を近づけてください。
次に利用者の手足を身体の中央に引き寄せてもらいます。腕を組み、膝を立ててもらってください。身体の力が一点に集中するため、全体的に動かしやすくなります。ベッドとの接地面積が小さくなり、摩擦も生じにくいので少ない力で介助できます。
体位変換をする際には指や手だけでなく、腹筋や背筋などの大きい筋肉を使う意識を持ってください。使用する筋肉を限定すると、その部位だけに負担が集中してしまいます。大胸筋やお尻の筋肉、太ももの筋肉なども意識して、身体全体を使うイメージで利用者を介助しましょう。
利用者を移動させる際には、持ち上げるのではなく水平に移動してください。持ち上げる行為は重力に逆らうことになるため、大きな負担がかかります。また、「押す」のではなく「引く」ように移動してください。押し出す動きは前方に力が分散するので、自分のお腹に力を集中する意識で引き寄せましょう。
つま先を移動する方向に向けて、腰と肩を平行にします。身体にねじれが生じると並行が崩れて腰痛の原因になります。重心の移動をスムーズにするためにも、腰と肩を平行にする意識を持ってください。
力点と作用点の間に支点を置くことで対象を動かしやすくします。例えば、利用者を端座位にする場合は、利用者のお尻を支点にすることで回転させやすくなります。持ち上げるのではなく、てこの原理を利用して介助をすることで負担が減り、大きな事故につながるリスクも減ります。
以上がボディメカニクスを活用した介護の基本となります。より深く学ぶためには以下の書籍が参考になります。
体位変換が苦手な人は教育体制が整った職場で学びましょう。教育体制の充実度を自力で調べるのは困難です。そのため、内部事情に詳しい転職エージェントを活用してください。自力で探すよりも多くの情報を得ることができます。
体位変換の負担を減らすためには利用者とのコミュニケーションがカギとなります。協力体制を作ることでスムーズに作業を進められるためです。介護士は腰痛になりやすいので、あらかじめ対策を練っておきましょう。