本来必要な行為を自力ではできない人をサポートすることが目的です。当然ながら、人は健康な状態であれば自分の身体を自由に動かすことができます。身体の向きや姿勢を日常的に変えることは人として自然な行為ですが、身体能力の衰えなどの理由によってそのような動作ができない状態になってしまいます。そのため、介護士が意図的に日常生活において必要な体位変換を行う必要があります。
介護士は体位変換だけでなく食事や着替え、身体清拭などの介助もします。ベッドと車いすの移乗やおむつ交換などに必要な動作もサポートしていきます。
身体リスクの予防も体位変換において重要な役割を持ちます。身体を動かす機会が減ることにより、関節の硬直化が進み、動きが制限され、身体の変形も生じます。血液の循環が悪くなることで褥瘡を引き起こすリスクも高くなります。褥瘡とはいわゆる床ずれで、血流が滞ることで皮膚がただれて傷が悪化する状態を指します。自身の体重によって血管が圧迫され、皮膚組織が悪化していくことを防がなければなりません。その他にも内臓機能の低下やむくみなど身体に悪影響を及ぼすリスクを、体位変換を行うことによって可能な限り減らします。
体位変換にはQOL(クオリティオブライフ)向上の役割もあります。身体的・精神的にストレスなく、利用者が自分らしく生活を送れるようにサポートします。体位変換は利用者とコミュニケーションを取りながら進めます。その際に、苦痛を感じさせないように工夫しながらサポートします。暑さや蒸れによる不快な状態を改善することも、生活の質を向上するための工夫となります。
長時間同じ体位でいることで部位が圧迫されるため、体位変換は定期的に行います。体位変換の回数は多いに越したことはありません。しかし、褥瘡ケアが目的の場合は2時間ごとを目安に行います。これは、東京都老人総合研究所・東京都養育院付属病院から出版された「褥瘡―病態とケア―」にも示されています。
大まかな目安は2時間ですが、実際に体位変換をする際には利用者の状態をよく観察した上で行います。現在策定されているガイドラインにも、体位変換の頻度は状況に応じて決定するように定められています。身体組織の耐久性や皮膚の状態は人によって異なるためです。また、マットレスを使用しているかどうかなど、利用者の生活環境にも左右されます。そのため、本当に適した体位変換の回数や頻度は、利用者の状態やニーズを把握した上で総合的に判断する必要があります。
体位変換が苦手な人は教育体制が整った職場で学びましょう。教育体制の充実度を自力で調べるのは困難です。そのため、内部事情に詳しい転職エージェントを活用してください。自力で探すよりも多くの情報を得ることができます。
体位変換の負担を減らすためには利用者とのコミュニケーションがカギとなります。協力体制を作ることでスムーズに作業を進められるためです。介護士は腰痛になりやすいので、あらかじめ対策を練っておきましょう。