身体を動かせない状態が続くと筋委縮・筋力低下が起こります。関節付近の炎症によって可動範囲が狭まる関節拘縮にも注意しなければなりません。関節拘縮になると関節の曲げ伸ばしが困難になり、苦痛を伴い身体がこわばります。加齢で骨量が減ることで骨萎縮のリスクも高まります。身体機能の低下に伴い食事量も低下し、その結果たんぱく質やカルシウムなどの栄養素が不足することも骨萎縮の要因として挙げられます。
寝たきりの状態が長引くことで心臓の機能も衰えます。立ちくらみをしやすくなるだけでなく、下肢を動かさない状態が長引くことで血栓ができます。血液やリンパの流れが悪くなることで血行障害やむくみが生じ、栄養障害につながる可能性もあるため十分に注意しなければなりません。
さらに、呼吸に関連する筋肉が衰えることで呼吸器障害を起こす可能性もあります。寝たきりの状態が続くことで肺活量が低下し、換気量も減少します。上半身を起こさない状態が続くことで誤嚥性肺炎のリスクも高まります。誤嚥性肺炎は高齢者の死亡原因の上位にも挙げられるほど危険な症状です。嚥下障害や胃の内容物の逆流が見られる高齢者の場合、唾液や逆流物を気道に誤嚥しやすいため、呼吸器感染症を引き起こすリスクもあります。
寝たきりの状態が続く高齢者が特に注意すべきなのが褥瘡(床ずれ)です。高齢者は筋肉が衰え、骨が皮膚に与える負荷が大きくなっています。褥瘡を防ぐためには定期的に体位変換をして、一定の箇所に負担がかかり続ける状態を防がなければなりません。それだけでなく、身体に合ったマットレスや寝具を選ぶ必要もあります。シーツのしわにも注意し、パジャマなどの衣類についているゴムやボタンが肌に食い込まないようにするといった工夫も求められます。また、褥瘡は感染症の原因になることもあります。
精神障害のリスクについても考えなければなりません。身体を自由に動かせない状態になり、落ち込んだ気分が続くことで抑うつ状態に陥ります。抑うつ状態になると運動や食事に対する意欲が失われ、さらに状態が悪化していきます。また、日常生活での刺激が失われるため、時間や場所の見当識が保てなくなります。それが認知機能の低下につながり、認知症が悪化する恐れもあります。
睡眠のリズムが保てなくなることでせん妄の症状が表れる人もいます。そのため、周囲は可能な限りコミュニケーションを取り、孤立を防ぐようにしなければなりません。
体位変換が苦手な人は教育体制が整った職場で学びましょう。教育体制の充実度を自力で調べるのは困難です。そのため、内部事情に詳しい転職エージェントを活用してください。自力で探すよりも多くの情報を得ることができます。
体位変換の負担を減らすためには利用者とのコミュニケーションがカギとなります。協力体制を作ることでスムーズに作業を進められるためです。介護士は腰痛になりやすいので、あらかじめ対策を練っておきましょう。